2006年の発表から20年。iPS細胞とは何か、そして2026年に何が起きたのかを整理します。
この記事では、次の2つについてお話しします。
② 2026年に何が起きたか
① iPS細胞とは何か
ひと言でいえば、細胞を「巻き戻した」もの
私たちの体の細胞は、いったん皮膚の細胞になると、その後もずっと皮膚の細胞のままです。ほかのものに変わることはありません。
iPS細胞は、この流れを巻き戻したものです。
すでに役割の決まった細胞に、いくつかの特定の遺伝子を導入すると、「まだ何になるか決まっていない」状態に戻ります。そこから神経の細胞にも、心臓の細胞にも導いていくことができます。
いつ生まれた技術なのか
京都大学の山中伸弥教授らの研究によって生まれた技術です。
2026年は、最初の論文発表からちょうど20年にあたります。
なぜ画期的だったのか
実は、iPS細胞より前にも、さまざまな細胞に変化できる細胞は知られていました。ES細胞です(胚性幹細胞)とは、受精卵が細胞分裂を始めた、ごく初期の段階から取り出される細胞です。体のあらゆる細胞に変化できる力をもち、1981年にマウスで、1998年にヒトで作製されました。iPS細胞と同じく、「多能性幹細胞」と呼ばれるグループに属します。
問題は、その入手方法にありました。ES細胞は、受精卵からしか取り出せなかったのです。
受精卵は、そのまま育てば一人の人間になります。そこから細胞を取り出せば、育つことはできません。
そのため、長いあいだ世界中で議論が続いていました。生きている患者さんを救うために、生まれる前の生命を犠牲にしてよいのか。認めるべきだという意見と、決して認められないという意見が対立し、法律で禁じる国もありました。研究は、そこで足踏みしていたのです。
iPS細胞の登場によって、この議論の前提そのものがなくなりました。
用いるのは、皮膚や血液といったごくありふれた細胞です。ほんの少し採取するだけで、誰も傷つけません。
何に使えるのか
大きく2つあります。
実際には、2つめの使い方のほうが早くから広く活用されてきました。
② 2026年に何が起きたか
3月 国内で初めて、2つの製品が承認されました
iPS細胞を用いた治療製品が国の承認を受けたのは、世界で初めてのことです。
この2つは「条件及び期限付承認」です。安全性が確認され、有効性も見込めそうだという段階で、先に承認する仕組みです。この先7年のあいだ、実際の治療を通してデータを集め続け、そこで確認できてはじめて正式な承認となります。
「効果が完全に確定した」という意味ではありません。
5月・7月 保険適用が決まりました
承認のあと、2製品とも公的医療保険の対象となることが決まりました。
いずれも高額ですが、保険が適用されるため、患者さんの実際のご負担は高額療養費制度などの条件によって変わります。
1月 がん治療の試験結果が公表されました
理化学研究所と千葉大学病院が、iPS細胞からがんを攻撃する免疫細胞をつくり、頭頸部がんの患者さんに投与する試験を行いました。その結果が、2026年1月に公表されました。
画像で評価できた8名のうち、5名は試験期間中に腫瘍の大きさが安定しており、そのうち2名では腫瘍が大きくなるのを抑える効果がみられたと報告されています。
これは第I相、つまり主に安全性を確かめる段階の試験です。実用化までにはまだ距離がありますが、進むべき方向は見えてきたといえます。
このほか、1型糖尿病、脊髄損傷、角膜の病気などでも研究が進められています。
参考・出典
- 住友ファーマ「日本における非自己iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞『アムシェプリ』の製造販売承認取得に関するお知らせ」2026年3月6日 https://www.sumitomo-pharma.co.jp/news/20260306.html
- Science Japan(JST)「iPS細胞を用いた再生医療等製品、国が初めて承認」2026年5月18日 https://sj.jst.go.jp/stories/2026/s0518-01p.html
- 日経バイオテク「クオリプスの再生医療等製品『リハート』の保険収載を中医協が了承、償還価格は5320万円に」2026年7月22日 https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/26/07/22/14822/
- 理化学研究所「iPS細胞から作製した“作り置きできる免疫細胞”が、がん治療を変える可能性」2026年1月19日 https://www.riken.jp/press/2026/20260119_1/index.html
- 千葉大学医学部附属病院「頭頸部がんに対する免疫細胞療法に関する研究成果を文部科学省で記者発表しました」2026年1月19日 https://www.ho.chiba-u.ac.jp/hosp/news/news_260119.html
最終更新日:2026年●月●日 / 制度や承認の状況は今後変わる可能性があります。最新の情報は各機関の公表資料をご確認ください。
本記事は医療情報の提供を目的としたものであり、特定の治療効果を保証するものではありません。記事中で紹介した承認済みの製品は、実施できる医療機関が限られており、一般の美容クリニックで受けられるものではありません。

