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なぜ外反母趾になる?約2,000人の研究で分かった種子骨との関係?|樋口淳也院長の研究をわかりやすく解説

公開日:2026年10月23日|最終更新日:2026年10月23日|情報確認日:2026年10月23日

親指の下にある小さな骨の形と外反母趾の関係を、約2,000人のX線データから解説します

論文「Relationship between medial partite hallux sesamoid and hallux valgus in the general population」の書誌情報 筆頭著者 樋口淳也 銀座YRクリニック
本記事で解説する論文(Foot and Ankle Surgery 2023年 第29巻8号 621–626ページ)。当院院長 樋口淳也が筆頭著者を務めています。書誌情報の出典:PubMed(米国国立医学図書館)PMID: 37679197。本研究は銀座YRクリニックの診療データや治療成績ではありません。

この研究でわかったこと

足の親指の下にある内側の種子骨が2つ以上に分かれている足では、外反母趾の割合が高く、親指の傾く角度も大きいことが分かりました。

※ 本研究は1回の調査時点のX線画像を分析した横断研究です。示されたのは関連であり、因果関係を証明するものではありません。

足の親指が人差し指側に傾き、付け根の内側が出っ張る。これは外反母趾の代表的な見た目です。

外反母趾には、靴、遺伝、足の構造など複数の要因が関わります。

この研究では、1,997人、計3,994足のX線画像を分析し、内側の種子骨の形によって外反母趾の状態に違いがあるかを調べました。

内側の種子骨とは?

足の骨格図 母趾の付け根にある内側種子骨と外側種子骨の位置 銀座YRクリニック
足の親指の付け根の関節の下には、通常2つの種子骨があります

足の親指の付け根の関節の下には、通常2つの種子骨があります。体重を支え、摩擦を減らし、腱の働きを助けています。

内側の種子骨が2つ以上に分かれている場合があり、「分裂種子骨」と呼ばれます。通常は、成長の過程で複数の骨化中心が完全に癒合せずに残った構造です。

分裂種子骨は、多くの場合症状がなく、骨折とは異なります。

分裂種子骨がある足では、外反母趾の割合が高かった

研究では、外反母趾角を測定しました。これは第1中足骨と親指の基節骨がなす角度で、大きいほど親指の傾きが強いことを示します。

足部の正面X線写真 外反母趾角(HVA)の評価に用いられる画像 銀座YRクリニック
外反母趾角は、第1中足骨と親指の基節骨がなす角度です

本研究では、外反母趾角が20°以上の足を外反母趾として集計しました。

外反母趾の基準を満たした割合 分裂種子骨がある足 分裂種子骨がない足
男性 33.3% 14.6%
女性 46.5% 34.6%

分裂種子骨がある足では、平均外反母趾角も大きくなっていました。

平均外反母趾角 分裂種子骨がある足 分裂種子骨がない足
男性 17.8° 14.0°
女性 19.6° 17.7°

これらの差はいずれも、統計学的に有意でした。

これらは調査時点で認められた足の違いを示す数字であり、個人が将来外反母趾になる確率ではありません。

この小さな骨が、なぜ外反母趾に関係するのでしょうか?

足の親指の関節は、周囲の靱帯、関節包、足底板、腱によって安定性が保たれています。内側の種子骨は、短母趾屈筋(親指を曲げる筋肉)の内側の腱の中にあります。

著者らは、種子骨が分かれていることで関節内側の安定性が低下し、力のバランスが変わって、外反母趾の形成に関わる可能性を考察しています。

研究では、この関連は比較的若い成人で目立ち、年齢が上がるにつれて全体として弱まりました。この結果も、著者らの考えを支持する所見でした。

ただし、同じ人を長期間追跡した研究ではないため、分裂種子骨が外反母趾を引き起こすと証明されたわけではありません。

分裂種子骨が見つかったら、治療は必要ですか?

治療が必要かどうかは、痛み、歩行への影響、その他の検査結果を踏まえて判断します。

研究では、参加者の18.7%に、少なくとも片足に内側の分裂種子骨が認められました。論文では、この構造の多くは無症状とされています。そのため、X線画像で見つかったという理由だけで治療が必要とは判断できません。

すでに外反母趾がある場合、X線検査で親指の傾き、中足骨の配列、種子骨の形を確認できます。これらを症状や病歴と合わせて評価する必要があり、1つの骨の形だけで原因を特定することはできません。

足部を診察する様子 外反母趾や前足部痛の評価イメージ 銀座YRクリニック
画像所見は、症状や病歴と合わせて評価します(※イメージ写真)

研究の背景と限界

論文名 Relationship between medial partite hallux sesamoid and hallux valgus in the general population
データの出典 日本のROAD研究・第5回住民調査
調査地域 和歌山県日高川町・太地町
調査時期 2018~2019年
対象 1,997人、計3,994足
年齢 21~95歳、平均64.2歳
検査方法 両足の非荷重位X線正面撮影
研究デザイン 横断的な画像解析
当院院長の役割 筆頭著者
DOI 10.1016/j.fas.2023.07.011

※ 横断研究:ある一時点で集団の特徴を調べ、その関連を分析する研究方法です。どちらが先に起きたかや、因果関係を証明することはできません。

※ 非荷重位X線:立って体重をかけていない状態で撮影したX線画像です。

1
どちらが先に生じたかは分からない
1回の調査で得られた画像を分析した研究であるため、種子骨の分裂と外反母趾のどちらが先に生じたかは分かりません。

2
画像による評価には限界がある
非荷重位のX線画像では、外反母趾の程度を過小評価する可能性があります。また、画像上で分裂種子骨と骨折を区別するのが難しい場合もあります。

3
対象地域が限られている
対象は日本の2地域の住民であり、結果をすべての人々にそのまま当てはめることはできません。

よくあるご質問

Q

分裂種子骨があると、必ず外反母趾になりますか?

A

必ずなるわけではありません。研究では外反母趾の割合が高かったものの、分裂種子骨があるすべての足に外反母趾が認められたわけではありません。

Q

分裂種子骨と骨折は、どう見分けますか?

A

けがの経緯、痛みの状態、画像の特徴を合わせて判断します。骨がいくつに分かれているかだけでは判断できません。

Q

靴は外反母趾に関係しないということですか?

A

そうではありません。この研究は、靴、遺伝、その他の要因の関与を否定するものではありません。

本記事について

執筆

銀座YRクリニック編集部

当院院長 樋口淳也は、本記事で紹介した論文の筆頭著者です。研究時の所属は、東京大学医学部整形外科でした。

医療情報に関するご注意

本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、医師の診断に代わるものではありません。紹介した研究は日本の住民調査のデータにもとづくものです。研究結果から、個人の病状や治療効果を予測することはできません。

参考文献
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