制度が管理しているのは何か。そして、来日前にご自身で確認できる4つのこと。
日本の幹細胞治療・PRP治療は、全額自己負担の自由診療であっても再生医療等安全性確保法の管理下にあります。提供する医療機関は認定再生医療等委員会の審査を経て厚生労働大臣に届出を行い、届出番号を取得します。ただし、届出が確認するのは提供体制の安全性であり、治療効果を国が保証するものではありません。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。効果には個人差があります。
再生医療を目的に日本へ渡航するという選択肢があります。ただ、「日本だから安心」という言い方は、実際には少し粗い説明です。制度が何を管理していて、何を管理していないのかを分けて理解しておくほうが、はるかに役に立ちます。
この記事では、日本の制度の中身を整理したうえで、来日を検討される方がご自身で確認できることをまとめます。
- ✓再生医療等安全性確保法が、臨床研究にも自由診療にも同じ手続を課していること
- ✓「届出済み」が確認していること/保証していないこと
- ✓承認された再生医療等製品と、自由診療の再生医療が別制度であること
- ✓患者ご自身で確認できる4つのポイントと、来日から治療までの流れ
1. 再生医療は、法律で管理された医療です
再生医療等の安全性の確保等に関する法律(再生医療等安全性確保法)は、平成25年(2013年)11月に公布され、平成26年(2014年)11月25日に施行されました。
この法律が重要なのは、その適用範囲です。多くの国では、規制の中心は細胞を用いた「製品」に置かれています。製造されたものとして、販売前に承認を要するという考え方です。一方、医師が患者自身の細胞を用いて行う治療は、その枠組みの外に置かれることが少なくありません。
日本は別の方法をとりました。中心にある考え方はひとつです。再生医療を提供するのであれば、臨床研究であっても自由診療であっても、同じ手続を経なければならない。
医療機関に求められる5つの手続
リスクに応じた3つの区分
リスクの程度に応じて三つの区分が設けられており、区分によって審査を行う委員会が変わります。
| 区分 | 対象となる技術 | 審査を行う委員会 |
|---|---|---|
| 第一種再生医療等 | iPS細胞・ES細胞・他家(他人由来)細胞など | 特定認定再生医療等委員会+厚生科学審議会の意見聴取 |
| 第二種再生医療等 | 培養した体性幹細胞を用いるものなど | 特定認定再生医療等委員会 |
| 第三種再生医療等 | 培養を伴わない自己細胞を用いるものなど | 認定再生医療等委員会 |
この枠組みは、いまも更新が続いています。令和6年(2024年)6月14日に「再生医療等の安全性の確保等に関する法律及び臨床研究法の一部を改正する法律」(令和6年法律第51号)が公布され、令和7年(2025年)5月31日に施行されました。これにより、従来は細胞加工物を用いる医療に限られていた規制の対象が、細胞加工物を用いない体内(in vivo)遺伝子治療等にまで拡大されています。
細胞を扱う医療について、研究段階か自由診療かを問わず、国が一元的に手続を課している。これが日本の再生医療の前提です。
2. 「届出済み」は何を確認し、何を保証しないのか
ここは、あいまいなまま語られやすい部分です。順を追って整理します。
- ✓提供しようとする再生医療の内容が、事前に第三者委員会の審査を受けていること
- ✓細胞加工が、許可または届出を経た施設で行われること
- ✓毎年の提供状況の定期報告と、疾病等が発生した場合の報告の義務を負っていること
- ✓届出された提供計画の情報が、厚生労働省のウェブサイトで公表されていること(公表は法律上の義務ではなく、医療機関の同意に基づきます)
- —治療の効果について、国が認めたということではありません
- —届出番号は「厚生労働省が承認した治療法」を意味するものではありません
- —効果には個人差があり、事前に約束できるものではありません
厚生労働省が公開している届出計画の一覧にも、審査の対象は「安全性等」と記載されています。確認されているのは提供体制の安全性と手続の適正さであって、有効性ではありません。
したがって、「届出をしているから効果は確かです」という説明があったとしたら、その論理自体が成り立ちません。
一見すると、これは再生医療にとって不利な説明に見えるかもしれません。しかし実際には逆です。この区別を理解している方は、医療機関を選ぶときの判断基準をひとつ手にしたことになります。「届出の有無」と「効果の裏づけ」を分けて質問できるようになるからです。
3. 承認された再生医療等製品と、自由診療の再生医療は別の制度です
日本にはもうひとつ、医薬品医療機器等法(薬機法)に基づく再生医療等製品の承認という道筋があります。平成26年(2014年)には、有効性が推定され安全性が確認された段階で早期に実用化を可能とする「条件及び期限付承認」の制度が設けられました。
日本再生医療学会が運営する再生医療ポータルによれば、2026年7月7日時点で承認されている再生医療等製品には、次のようなものが含まれます。
これらは治験を経て国の審査を受けた製品であり、使用できる医療機関や条件も定められています。自由診療として提供される再生医療とは、根拠の水準も手続も異なる、別の制度です。
当院で提供しているのは、再生医療等安全性確保法に基づく自由診療です。上記の承認済み再生医療等製品ではありません。
上記は、日本の制度がこの領域でどこまで到達しているかを示す事実として記載したものであり、当院が同一の治療を提供すること、または当院の治療が同等の有効性の裏づけを持つことを意味するものではありません。
このことは、そのまま医療機関を見分ける視点にもなります。自由診療の説明の中で、承認済み製品の治験データが自院の治療の根拠であるかのように示されている場合は、区別が曖昧になっている可能性があります。
4. 患者が自分で確認できる4つのこと
国際幹細胞学会(ISSCR)は、十分な検証も規制当局の承認も経ていない幹細胞治療が世界各地で提供されている状況について、継続的に注意を促しています。関連する文献では、規制外の治療を受けたことにより将来の正規の臨床試験に参加できなくなる可能性が指摘されているほか、重篤な副作用や死亡に至った症例報告も存在します。
これは特定の国の問題ではありません。国を比べるよりも、確認の方法を持つほうが確実です。日本の制度のもとでは、次の4点は患者ご自身で確認できます。
1届出番号を確認する。そして「その治療が」含まれているかを確認する
まず知っておいていただきたいのは、届出は治療内容ごとに個別に行われるということです。同じ医療機関でも、関節の治療と頭皮の治療では番号が異なります。ひとつの番号を示して「当院はすべて届出済みです」と説明される場合は、その番号がどの治療に対応するものかを確認してください。
厚生労働省は「届出された再生医療等提供計画(治療)の一覧」を公開しており、医療機関名と治療内容を照合できます。ただし前述のとおり、提供計画の公表は法律上の義務ではなく医療機関の同意に基づくため、すべての情報が掲載されているわけではありません。
当院が関節に対して行うPRP治療は、第二種再生医療等として届出を行っています(届出番号 PB3250225)。皮膚および育毛に対するPRPは第三種です(PC3250241/PC3250242)。
第二種と第三種の違いは、審査を行う委員会にあります。第二種は特定認定再生医療等委員会の審査を必要とする区分であり、第三種は認定再生医療等委員会が審査します。
他の医療機関の区分について、当院が評価を述べることはありません。これは当院の届出内容に関する事実の記載であり、上記の一覧でご自身で照合していただけます。
2医師の資格が、治療する部位に対応しているかを確認する
再生医療は複数の診療科にまたがります。膝の治療であれば、変性の程度、半月板や靱帯の状態、手術のほうが適していないかといった判断が必要になります。これは整形外科の診断領域です。皮膚や毛髪は、また別の評価軸になります。
確認していただきたいのは、担当医が「再生医療の経験が豊富」であるかどうかではなく、その部位に対応する専門資格を有しているかです。あわせて、日本再生医療学会の認定医制度についても確認できます。
3細胞加工がどこで行われているかを確認する
細胞加工を行う施設には、別途、許可または届出が必要です。外部機関に委託する場合はその施設が許可を受けている必要があり、医療機関が自ら加工する場合は届出を行う必要があります。
- •加工は院内で行われるのか、外部への委託か
- •その施設の許可番号または届出番号は何番か
- •細胞の採取から投与まで、どのくらいの期間があるのか
4「この治療で何ができないか」が説明されるかを確認する
もっとも実用的な確認方法です。適切な説明には、適応となる条件と適応とならない条件、起こりうる副作用、必要な回数と間隔、効果の個人差、そして効果が得られなかった場合の次の選択肢が含まれます。
説明が良い面だけで構成されていて、その日のうちの決断を促される場合は、それ自体が判断材料になります。
ご自身の状態が適しているかどうかは、まず無料カウンセリングでご確認いただけます。
記事の内容だけで適応を判断することはできません。診察と検査を経たうえで、医師がご説明します。
5. 届出の範囲、適応の判断、リスクと費用について
届出の範囲に含まれない治療があります
当院では、iPS細胞由来エクソソームや臍帯由来幹細胞セクレトームを用いる治療も行っています。これらは細胞加工物には該当せず、上記の再生医療等提供計画の届出範囲には含まれません。医薬品医療機器等法上の承認を得ていない未承認医薬品を用いる自由診療にあたります(詳細は本記事末尾の説明をご覧ください)。
届出番号が診療メニュー全体を包括していると受け取られないよう、この区別は医療機関の側から明示されるべき事項だと考えています。
適応の判断について
一般的には、膝の痛みに対して運動療法やヒアルロン酸注射などの保存療法を行っても改善が十分でなく、人工関節置換術の段階には至っていない場合に、選択肢のひとつとしてご相談いただくことがあります。
一方、治療部位に感染がある場合、活動性の悪性腫瘍がある場合、重篤な血液疾患や凝固異常がある場合、妊娠中・授乳中の場合などは、一般に適応となりません。
ただし、最終的に適応となるかどうかは、診察と画像検査等を経て医師が判断します。記事の内容だけでご自身の適応を判断することはできません。
主なリスク・副作用
注射部位に軽度の痛みや腫れが出る場合があります(数日で自然に解消)。自己細胞を用いるためアレルギー反応のリスクは低いとされていますが、まれに感染や炎症反応が生じる場合があります。
まれに、PRP注射後3〜4日のあいだ赤み・かゆみ・痛み・腫れが出る場合があります(通常数日で改善)。自己血液を用いるため、アレルギー反応は生じにくいとされています。
注射部位に軽い痛みや腫れが生じることがあります(通常数日以内に改善)。まれに一時的な熱感・倦怠感が出る場合があります(1〜2日程度でおさまる傾向)。
上記は主なものであり、すべての副作用を網羅したものではありません。効果には個人差があり、期待した効果が得られない場合があります。
治療期間・回数の目安
- •自己脂肪由来幹細胞治療:局所注射は最低1ヶ月の間隔をおいて2〜3ヶ月に1回、点滴は最短1ヶ月の間隔で2〜3ヶ月ごとを推奨します。
- •PRP療法:採血から注射まで約90分。回数は医師の診断に基づいて決定します。
費用(自由診療・すべて税込)
| 治療 | 費用 |
|---|---|
| 自己脂肪由来幹細胞治療(点滴/約2億個・回) | ¥3,190,000〜¥24,563,000(1〜10回) |
| 自己脂肪由来幹細胞治療(関節症・皮膚再生・育毛/約1億個・回) | ¥1,880,000〜¥10,377,600(1〜6回) |
| PRP療法(関節・片膝) | ¥264,000〜¥712,800(1〜3回) |
| PRP療法(皮膚再生・育毛) | ¥286,000〜¥772,200(1〜3回) |
| iPS細胞由来エクソソーム点滴 | ¥198,000〜¥1,009,800(1〜6回) |
| 臍帯由来幹細胞セクレトーム点滴 | ¥238,000〜¥1,213,800(1〜6回) |
※ 上記のほかに初診料¥3,300/再診料¥2,200(税込)がかかります。
※ いずれも自由診療であり、日本の公的医療保険は適用されません。
6. 来日から治療までの流れ
1|オンラインでの事前相談
症状の経過、これまでの治療歴、お持ちであれば画像検査の結果を共有していただき、来日される価値があるかどうかを事前に確認します。渡航前にこの段階を済ませることで、来てから適応外と判明する事態を避けられます。
2|ビザ
相談や治療を目的に来日される方の多くは、一般の短期滞在ビザを利用されています。日本には、治療等を目的に訪日する外国人患者とその同伴者を対象とした医療滞在ビザ(医療滞在査証)も設けられています。
外務省が公表している内容(同省ページ 2024年7月29日更新/本記事は2026年7月時点の情報に基づきます)の概要は、次のとおりです。
- •滞在期間:90日以内、6か月、または1年。患者の病態等を踏まえて決定されます。なお、滞在予定期間が90日を超える場合は入院が前提となり、別途「在留資格認定証明書」の取得が必要です。
- •数次査証:必要に応じて発給されますが、発給の対象となるのは1回の滞在期間が90日以内の場合のみです。申請にあたっては医師による「治療予定表」が必要です。
- •有効期限:必要に応じ3年。患者の病態等を踏まえて決定されます。
- •同伴者:親族以外の方でも同行が可能です。ただし同伴者は身の回りの世話のために訪日する方であり、収入を伴う活動はできません。
- •申請の流れ:登録された身元保証機関(医療コーディネーター・旅行会社等)を通じて「受診等予定証明書及び身元保証書」を入手したうえで、在外公館に申請します。
ビザの要件は変更される場合があります。申請前に必ず外務省「医療滞在査証」のページ(https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/visa/medical/index.html)および申請先の日本国大使館・総領事館で最新の情報をご確認ください。 なお、当院は身元保証機関ではなく、ビザの発給を保証する立場にはありません。
3|初診
診察と必要な検査を行い、治療内容、想定されるリスク、必要な回数と間隔、費用についてご説明し、ご同意をいただいたうえで進めます。初診料3,300円/再診料2,200円(税込)。この段階でお決めいただく必要はありません。
4|治療
培養した幹細胞を用いる場合は、細胞の採取と投与が別の日程になり、間に培養期間を要します。渡航のご予定は、これを前提に組んでいただく必要があります。PRPのように当日調製する治療は、1回のご来院で完了します。
5|治療後のフォロー
再生医療等安全性確保法では、提供計画に治療終了後の追跡調査の方法を記載することが求められています。当院は届出内容に沿って治療後の経過確認を行い、提供状況の定期報告を国に提出しています。
ご帰国後に対応が必要な症状が生じた場合は、まずお近くの医療機関を受診してください。当院からは、治療内容についての説明資料をお渡しすることができます。現地の医師にご提示いただけます。
7. よくあるご質問
- 本治療に使用するiPS細胞由来エクソソームは、医薬品医療機器等法上の承認を得ていない未承認医薬品です。
- 国内医療機関向けルートで入手しています。
- 同一の成分や性能を有する国内承認医薬品等はありません。
- 主要な欧米各国において承認されていません。現在、複数の国において研究が進められていますが、重大なリスクが明らかになっていない可能性があります。
- 万が一重篤な副作用が出た場合は、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。
- 本治療に使用する臍帯由来幹細胞セクレトームは、医薬品医療機器等法上の承認を得ていない未承認医薬品です。
- 日本人の健常ドナー由来の臍帯血を原料に、国内医療機関向けルートで入手しています。
- 同一の成分や性能を有する国内承認医薬品等はありません。
- 主要な欧米各国において承認されていません。重大なリスクが明らかになっていない可能性があります。
- 万が一重篤な副作用が出た場合は、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。
上記の治療はいずれも自由診療であり、公的医療保険は適用されません。効果には個人差があります。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断・治療方針を示すものではありません。効果には個人差があります。ご自身の適応については、診察のうえで医師がご説明します。
最終更新日:2026年7月
当院は完全予約制の自由診療クリニックです。海外にお住まいの方には、まずオンラインでの事前相談をご案内しています。
現在のご状態、これまでの治療歴、画像検査の結果をふまえ、来日される価値があるかどうかを、渡航前の段階でご確認いただけます。
詳細情報・ご相談予約
参考文献
- 厚生労働省「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」関連情報
- 厚生労働省「届出された再生医療等提供計画(治療)の一覧」
- 再生医療等の安全性の確保等に関する法律及び臨床研究法の一部を改正する法律(令和6年法律第51号、令和6年6月14日公布)
- 日本再生医療学会 再生医療ポータル「再生医療等製品情報」(2026年7月7日更新)
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)「再生医療等製品」承認情報
- 外務省「医療滞在査証」(2024年7月29日更新)https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/visa/medical/index.html
- International Society for Stem Cell Research, Guide to Stem Cell Treatments



